第96回: 朝の日課

ほどの保育園 園長 山田暢子
イラスト:原稿を読み上げる女性

毎朝9時、園内に放送をする。

「おはようございます。〇月〇日、〇曜日です。今日の朝は寒かったけれど、みんな元気に保育園に来ることができましたね。園庭には雪がたくさん積りましたよ。ふわふわの雪の上を歩いたり、そりに乗ったり、雪だるまも作れそうです。楽しみですね。ラジオ体操も元気にしましょう!」

0歳児は保育室で、1.2歳児は遊戯室で、3.4.5歳児はプレイルームで、それぞれの場所で体操をする。そして、事務室では、園長と主任が少しでも運動しなければと真面目にとりくんでいる。あまりに一生懸命な二人の姿に、初めて出くわした人は驚くらしく「いつもこんなふうなのですか?」と聞かれることがあるがその度、「そうですよ。一緒にやりましょう。」と声を掛ける。

でも、私にとっては体操よりもその前のほんの数十秒の一言が大事なものに思える。毎朝、思いつくままに話しかけること、それは子育てをする中でごく自然に親が子どもに語りかけ、笑いかけることにも似た感覚だ。気の向くままに発する何かを伝える言葉、完全には理解できなくてももらった言葉に何かを感じる心、その小さなやりとりの繰り返しから生まれる柔らかい雰囲気を大切にしていきたいと思う。

この季節は寒さや雪の話題になりがち。早く暖かくなって、「園庭に、みやこわすれの花が咲きました。昔、お殿様がこの花を見てお城に帰るのも忘れるほどだったのでこういう名まえがついたそうですよ。」と、お話しができるような春が待ち遠しいこの頃である。